不便の中にある、ほんとうの豊かさ〜安藤忠雄さんの建築に学ぶ、ものづくりの本質〜

私が尊敬する・・いや、大好きな建築家、安藤忠雄さんのお話を少し。

私は「便利」という言葉に、どうも馴染めません。
人はつい、楽な方へ楽な方へと進みたがる。でも私は、そういう生き方にちょっと違和感を覚えてしまうのです。
むしろ「不便さ」の中にこそ、人が考えたり、工夫したりする余地がある――そう思っています。

そんな私が安藤忠雄さんに惹かれたきっかけは、「住吉の長屋」という建物でした。
この家は、建物の真ん中が吹き抜けの中庭になっていて、なんと、トイレに行くのに外を通らなきゃいけないんです。しかも雨の日は傘をさして(笑)
今の時代なら「そんな不便な家、ありえない!」って言われそうですが、そこがすごい。
自然の光や風、雨を生活の中に取り込むことで、人が自然とともに暮らすとはどういうことかを、住む人に体感させてくれるんです。

たしかに、今の暮らしは快適です。
エアコンで気温を調整し、電動シャッターで光を遮り、スイッチ一つで何でもできる。
でもその便利さの中で、私たちは自然とともに生きる感覚や、五感で感じる豊かさを、少しずつ手放している気がします。

安藤さんの建築は、光や風、水といった”自然”を空間の主役に据えています。
それはただの住まいではなく、「私たちはどう生きるべきか?」という問いを、静かに投げかけてくるように感じるのです。

そして、私自身の”ものづくり”にも通じるものがあります。
私はこれまで、便利さだけを追いかけるような製品は作ってきませんでした。
もちろん、役に立つものを作りたいという思いはあります。でも、それだけじゃ足りない。

私が大切にしているのは、「使う人が自分で考える余地を残す」こと。
たとえば、どう使えばもっと自分に合うだろう?
なんでこんな構造になってるんだろう?
そんなふうに、使い手が”考えるきっかけ”を持てるモノづくりこそ、本当に意味のある仕事だと信じています。

マニュアル通りにボタンを押すだけで「はい快適」――
それだけじゃ、人は”生かされている”だけになってしまう気がして。
でもちょっとした不便さや違和感があると、人は考え、感じ、工夫し始める。
そこにはきっと、生きている実感がある。

安藤忠雄さんの建築は、そんな感覚を思い出させてくれます。
それは単なる空間ではなく、人と自然、人と人、そして人と自分自身をつなぐ「媒介」なのかもしれません。

だから私は今日も、”余白”のあるモノをつくろうと思うのです。
便利すぎない、不便すぎない、でも“生きる”という実感を呼び起こすような、そんなものを。

kimamana-jiyujin-1957

創業49期目、横浜のIT企業ハル・エンジニアリング株式会社、代表取締役会長の平田達彦です。2025年3月末まで社長、4月より会長となりました。ブログにて色々な情報を発信させて頂きます。「自由人として愉しむ」を基本に生きています。多くの人たちと絡んでいきたいと考えていますのでどうぞよろしくお願いいたします。愉しい人と人のネットワークの構築と愉しいものづくりを目指します。

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