過去の自社製品のご紹介。幻の通信ROMライター「ROM-FAX RF-1000」
1枚の写真から始まる開発史の掘り起こし
ハル・エンジニアリング株式会社の過去の開発品ファイルを整理していたとき、
たった2枚の写真しか残されていなかった開発機器。その名は 「ROM-FAX RF-1000」。
1980年代中盤に弊社が手掛けた、電話回線を使ってROMデータを遠隔地へ送受信できる通信機器と考えられます。
残念ながら、マニュアルや回路図、背面写真は現存しておらず、
現物とこの2枚の写真だけが、当時を語る手掛かりです。

左上には「ROM-FAX RF-1000」のロゴプレート
小型表示窓(通信状態やエラー表示用か)
「送信」「受信」「再セット」の3つの操作ボタン
右側には青色のZIFソケットが3つ並び、EPROMやROMカートリッジを直接装着可能

薄型でシンプルな筐体設計
前面のみで全操作が完結する業務機らしい構成
想定される機能(推測)
当時の技術背景と外観から、RF-1000は以下のような機能を持っていたと推測されます。
■送信モード
>ソケットに装着したEPROMの内容を読み出し、モデム回線経由で送信
■受信モード
>回線から受け取ったデータをROMに直接書き込み
■再セット
>通信や書き込みのリセット・再初期化
制御は外部パソコン(当時はPC-9801など)とRS-232Cで接続し、専用ソフトで転送手順やエラー訂正を行っていた可能性が高いです。
時代背景
通信速度:1200?2400bpsが主流
ネットワークはまだ普及前、公衆電話回線+モデムが標準
ソフト更新は物理ROMチップの交換が当たり前の時代
遠隔更新を可能にするこうした機器は、業務効率化の切り札的存在だった
利用シーン(推測)
・全国の店舗や営業所に設置されたPOS端末や業務機器のプログラム更新
・ゲーム基板用ROMの配布
・出荷済み機器のファームウェア改修サービス
<まとめ>
ROM-FAX RF-1000は、詳細仕様が不明なまま残された幻の通信機器ですが、
1980年代における「物理ROMのリモート配信」という野心的な発想を形にした一台だったことは間違いありません。
今やネット経由で数秒で更新が完了する時代ですが、
当時はこうした専用機が静かに現場を支えていました。
埋もれたハル・エンジニアリング株式会社の開発の歴史を、ここに記録します。