果たして山を何合目まで登ったことだろう・・。

山といっても、私が登っているのは”ものづくり”という名の険しい山だ。
軽快に登っているように見えても、突然足場の悪い場所に出くわして思うように進まない。
ただ、無理をしないこと──これだけは肝に銘じている。滑落することはないだろう。油断せず、一歩ずつ進むに限る。


登山といえば、私は小学校5年生から高校3年生までボーイスカウトに所属していた。
そのおかげで、そこそこの山登り経験はある。
そういえば大学の時、ある道場で空手をやっていたせいで部活には入らなかったが、一度ワンダーフォーゲル部の先輩に誘われて丹沢山に登ったことがある。

その時、私が背負わされたのは――20リットルのポリタンク3個!
背負子に括りつけて、命の水(=お米で作られたあの水)を運んだ。
現役の学生だけでなくOBも参加する登山だったので、相当な量が必要だったのだ。

確か4〜5泊。しかも運悪く雨続き。
挑戦するどころか、食料調達以外はテントの中で”命の水”を飲む日々。
ある日、それが苦痛に思えた私は「一人で下山する!」と宣言した。
山に詳しくもないくせに、根拠のない自信で沢伝いを下ろうとしたが──背後から声が。

「おい平田、このまま下山してたら滑落してたぞ」
笑顔で声をかけてくれたのは先輩だった。
そう、私は見事にルートを間違えていたのだ。

20歳そこそこで死ぬわけにはいかない。
結局しぶしぶテント生活を続行し、全員無事に下山。
もちろん命の水はすべて空になり、帰りの荷物はポリタンク3個の空っぽ仕様。
山で迷子になったらヤバいよね……。


それから10年以上後。
今の妻と(当時はまだ結婚前)、愛犬2匹を連れて長野県・峰の原高原のペンション「チロル」へ。(ここはペットと泊まれる当時珍しいペンションだった。)
宿泊2日目だったか突然目の前にそびえる根子岳を見て「登ろう!」と即決。何故かって?周りを見渡して一番高い山に見えたからだ。
愛犬2匹と共に、美味しい空気、素晴らしい景色、野生のブルーベリー&コケモモを味わいながら標高2,207メートルの山頂に到着した。

が、そこで愕然とする。
「そ、そんなバカな……!」
目の前に、もっと高い山がそびえ立っていたのだ。
一番高い山だと思って登ったのに、上には上があるとは……。

そんなショックを受けつつも、山頂でおにぎりを頬張り、景色を満喫。
ふと下を見ると、明らかに”近道”と思える登山道を発見。
「よし、帰りはこの道で降りよう!」と即断。大きな声でそう叫んだ。

そこに現れたのが、山の地図を広げた熟練の登山者。
「その道は〇〇だから、やめておきなさい」
なるほど、ここは言うことを聞くべきだ。

……しかぁ〜〜し、登ってきた道は険しかった。(登っているときに、ここを降りるのは嫌だなと思っていたのだ。)
そして最悪だったのが、愛犬2匹が「おらたちは歩きたくない!」と全力拒否。”う、嘘だべっ!お前ら犬、駆け下りろ!”と心の中で叫んではみたが、まあ現実的には仕方なく1匹をリュックへ、もう1匹を抱っこして下山。

登った人ならわかると思うが、下山時の膝の負担は半端じゃない。
途中で膝が大爆笑(ガクブルガクブル)を始め、尻もち連発。
それでもなんとかペンションへ帰還。

あの時、あの熟練者が止めてくれなかったら……?
今頃まだ根子岳を彷徨ってたかもしれない。
(いや、さすがにそれはないけどね。あはは……)


というわけで、今私が登っている”ものづくり”という山も、慎重に、一歩ずつ登っています。
焦らず、慌てず、命の水を片手に。(たまに両手に…)
滑落せず、笑いながら山頂を目指して。<m(__)m>


(2025.10.7追記)

確かに、困難な山登りに挑戦することは大きな勇気を必要とし、生半可な気持ちでは成し遂げられない。
だが、本当に大切なのは”下山”なのだと思う。

登頂という大きな目的を果たし、喜びのあまり気が緩んだ瞬間に足を滑らせてしまえば、
そこに待っているのは滑落という大きな代償。運が悪ければ命さえ落としかねない。

”ものづくり”という山登りも同じだ。完成がゴールではなく、
その後に社会の中でどう根付き、どう広がっていくかを見届けること。
そして、誤った方向へ進まないように見守り続けることが、
本当の意味での”下山”であり、私が最も大事にしたいことなのだ。

kimamana-jiyujin-1957

創業49期目、横浜のIT企業ハル・エンジニアリング株式会社、代表取締役会長の平田達彦です。2025年3月末まで社長、4月より会長となりました。ブログにて色々な情報を発信させて頂きます。「自由人として愉しむ」を基本に生きています。多くの人たちと絡んでいきたいと考えていますのでどうぞよろしくお願いいたします。愉しい人と人のネットワークの構築と愉しいものづくりを目指します。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です