「午前四時、ビーサン爺さん始動」
午前四時。世間は寝静まり、爺さんはなぜか目が覚める。
理由? 特にない。トイレでもない。
最近、「夜中にトイレが近いのは膀胱の垢のせい」なんて話も聞くが、
どうやら自分はまだその領域ではないらしい。
それにしてもこの時間帯、静かでいい。
空気の粒まで止まっているような気がする。
この静寂こそ丸ごと自分の時間だ。
……しかし、あと一時間もすればあいつが来る。
愛犬(?)である。
昼間は呼んでも返事もしないくせに、
自分の都合のときだけはやたらと元気になる。
まだ暗い朝五時。
爺さんは寒中電灯を手に、ビーサンを履いて散歩へ出る。
「ふえくしょん!」と盛大なくしゃみをしながら。
もし、暗い道でビーサン姿の怪しい爺さんを見かけても、
どうか警察にだけは通報しないでほしい。
それはただ、頭の体操がてら散歩しているだけなのだから。
