ぽぽまるに生かされている男 〜脱走王の監視日記〜
私の一日は、
どんな天気であろうと——
ぽぽまるの散歩で始まり、ぽぽまるの散歩で終わる。
「飼っている」のではない。
完全に “飼われている” 側だ。(私の序列は最下位だ)
私の健康も生活リズムも、実はぽぽまる君が握っている。
ところがこの王様、
以前 とんでもない脱走劇 をやらかした。
散歩スポットから車で帰宅中、
ふと胸騒ぎがして後部座席を見ると……
ぽぽまるがいない。
いや、いるはずの王がいない。
血の気が引くというのはこういうことだ。
私は即Uターンして、
“あの場所” へ全速力で戻った。
すると…
散歩スポットには パトカー が一台。
嫌な予感が確信へ変わる。
パトカーの後部座席のドアが開き、
見知らぬ熟女さんがぽぽまるを抱っこして登場。
私は人生最大級の声で叫んだ。
「ぽぽまるぅぅぅ〜っ!!!」
お巡りさん
「お宅のワンちゃんですか?
……証拠は?」
慌ててスマホの写真を見せ、
ようやく“身元保証”されてぽぽまるは釈放された。
「脱走なんて……初めてなんです!」私が笑顔でこう言うと——
お巡りさんは冷静に返した。
「みんなそう言うんですよね。“初めてなんです”って。」
あの日の屈辱は忘れない。
心の中ではもちろん叫んでいた。
“ほんまに初めてなんやでぇ~~~っ!!!”
しかしそれを声に出せばただの不審者。
私は黙ってぽぽまるを抱きしめ、
静かに家路についた。
■ だから私は今も“散歩後のぽぽまる”を監視している
というわけで、脱走王・ぽぽまるは
散歩後の儀式——手足の洗浄タイムが大嫌いだ。
雨の日は特に泥んこになるので、
洗面器に水を入れ、
手足を洗ってタオルでふきふきする。
しかしこの行為が、
この世で一番不愉快らしい。
ガルルルルと“野生モード”が点灯
本気噛みスイッチON
人間語そっくりの声で抗議(これ本当に人間の言葉にそっくり。今度動画でお見せします)
「やめろ!」「触るな!」「自由を返せ!」
と言わんばかりに暴れる
おそらく翻訳アプリを使ったら
「執事よ、手を放せ!」
と表示されるに違いない。
洗われるたびに憤慨し、
こちらを睨みつけながら車に乗り込む。
私はその背中を見ながら、
“二度と脱走させるまい” と
全神経で監視している。
なにせ前科一犯だ。
■ それでも私は、ぽぽまるに生かされている
結局のところ——
外に出る理由も、
毎日歩く健康も、
気持ちの切り替えも、
この騒がしい小さな王様のおかげだ。
ぽぽまるの散歩がなければ、
おそらく私は1日中ほとんど動かずに終わるだろう。
私はぽぽまるに生かされている。
そして今日もまた、
散歩の終わりに足を洗われ怒り狂うぽぽまるを、
私は優しい執事のように見守っている。
