過去の挑戦を、あらためて記録しておきます。 ―― 遠隔医療と、組み込みエンジニアとしてのチャレンジ ――
過去を振り返ると、
「あれは一体、何に挑戦していたのだろう」と思うことがある。
しかし、資料を掘り起こし、当時の構想を見返してみると、はっきりと思い出す。
あれは、間違いなく“未来を先取りしようとした挑戦”だった。
遠隔医療の原点は「Face to Face」だけでは足りなかった。
ハルは以前、
ナサコーポレーションの 「うらら」 という遠隔医療機器の開発に携わった。
遠隔医療の基本は、
医師と患者が画面越しに向き合う Face to Face だ。
しかし当時から、私は一つの違和感を持っていた。
「顔だけ見えても、本当の診療には足りないのではないか?」
医療には、“見せなければならない情報” が確実に存在する。
患部、腫れ、赤み、動き、そして患者本人も気づいていない微妙な変化。
それを、医師が自分の目で確認できなければ意味がない。
2011年、もう一段踏み込んだ挑戦へ
時代は進み、2011年。
ハルは、
「うらら」で得た経験を踏まえ、
独自の在宅健康管理システム(遠隔医療) の構築に挑戦した。

この挑戦には、
もう一つ大きな意味があった。
それは、
組み込みソフトウェア企業として、
Android OS を“専用機器”に載せるというチャレンジだった。
Androidはスマホだけのものではない。
当時、Android OS はすでに世に出ていたが、使われているのはほぼスマートフォンのみ。
私たちがやろうとしたのは、Linux OS と Android OS を専用の医療向け端末に組み込む。
必要な周辺機器(カメラ、マイク、血圧計など)をドライバーレベルから統合。
専用アプリを動作させ、家庭と病院をネットワークで常時接続するという、
当時としてはかなり攻めた構成だった。
「既製品を使う」のではなく、“使える形にしてから世に出す” という、
組み込み屋らしい発想である。
「カメラを動かせる」ことの意味
このシステムで、私が最もこだわったのが カメラの扱い だった。
カメラを固定せず、患者自身、あるいは家族が、見せたい患部に向ける。
動かしながら状態を伝える。
医師と会話しながら確認する。
それを、リアルタイムで医師に届ける。
画面の片側には医師、もう片側には 自分自身の映像。
これにより、医師は状況を正確に把握でき、患者も「ちゃんと見てもらえている」という安心感を得られる。
Face to Face に「見せる」という次元を足した遠隔医療 が、ここで初めて成立した。
最新OSを載せ続けるという覚悟
もう一つの挑戦は、Android OS を常に最新バージョンで載せる という方針だった。
医療機器だからこそ、「枯れた技術でいい」という考えもある。
しかし私は、「社会の進化と切り離された医療は、いずれ孤立する」と考えていた。
だからこそ、OSの更新、アプリの進化、ネットワーク技術の変化。
それらを前提にした“進化し続ける専用機器” を目指した。
先頭を走るということ。振り返ってみれば、この一連の取り組みは、
決して効率の良いものではなかった。
苦労も多く、理解されない場面も多かった。
それでも、やるなら、先頭を走ろう。
誰かの後を追うのではなく、「まだ形になっていないもの」を自分たちの手で形にする。
それが、ハル・エンジニアリングという会社の変わらぬ姿勢だったのだと思う。
そして、今につながっている。
不思議なもので、当時の挑戦を思い返すと、今取り組んでいるプロジェクトとも
一本の線でつながっていることに気づく。
見えないものを、見えるようにする。
距離を超えて、安心を届ける。技術は、人のために使われてこそ意味がある。
あの頃の挑戦は、確かに今へと続いている。
だからこそ、この記録は、今、残しておく意味があると思った。
