「投げたことそのものに意味がある。― 宇宙から教わった挑戦の話 ―」
昨日、関東学院大学のKGUオープンイノベーションスクエア「HAMARISE」で開催された、大人のための教養講座『KGU関内大学』に参加してきました。
HAMARISEにおける初のイベントです。
記念すべき第1回のテーマは、
「宇宙をめぐるロマン~星の大爆発の謎に迫る!~」
講師は、関東学院大学理工学部 数理・物理コース教授の中嶋大先生。
専門分野は宇宙物理学、高エネルギー天文学です。

普段、私が仕事やものづくりの中で接している世界とは、文字通り桁違いに大きな「宇宙」の話。
実に面白く、そして大変勉強になる時間でした。
宇宙でも物理学は共通なのか
講義の中で面白いと思った話の一つが、
表現方法は違ったとしても、物理学は宇宙の中で共通しているのではないか
という考え方でした。
地球上の人間同士ですら、国が違えば言葉も文化も違います。
ましてや地球外生命体が存在するとしたら、私たちとはまったく異なるコミュニケーション手段を持っている可能性があります。
しかし、物理法則そのものは宇宙で共通しているのではないか。
そんな話を聞きながら、なるほどなぁ……と。
宇宙という途方もなく大きな世界を考えると、普段当たり前だと思っていることまで、改めて「本当にそうなのか?」と考えさせられます。
まさしく『KGU関内大学』が掲げている、
「自ら本質的な問いを立てる」
ということなのかもしれません。
ボイジャーに感じた「ロマン」
そして私が特に面白いと思ったのが、ボイジャーに搭載された「ゴールデンレコード」の話でした。
1977年に打ち上げられたボイジャーには、地球の写真、自然界の音、音楽、さまざまな言語による挨拶などが記録されたレコードが搭載されています。
いつの日か、地球外の知的生命体がボイジャーを発見するかもしれない。
その可能性に託して、人類からのメッセージを宇宙へ送り出したわけです。
いやぁ、これはまさしくロマンです。
しかし考えてみれば、不思議な話です。
仮に地球外生命体がボイジャーを発見したとしても、それが人工物だと認識してくれる保証はありません。
レコードを発見したとしても、それが情報を記録した媒体だと理解してくれる保証もありません。
再生方法を理解できるのか。
そこに記録されている写真を「写真」として認識できるのか。
音楽を「音楽」として理解できるのか。
人間の挨拶を「挨拶」だと理解できるのか。
何一つ保証されていません。
さらに、すべてを理解してくれたとしても、
「あなた方のメッセージを受け取りました」
と地球へ返信してくれる保証など、どこにもありません。
それでは、この試みは何をもって「成功」とするのでしょう。
考えているうちに、一つの言葉に行き着きました。
投げたことそのものに意味がある
届くかどうか分からない。
理解されるかどうかも分からない。
返事が来るかどうかなど、もっと分からない。
それでも人類は、自分たちの存在を記録したものを宇宙へ投げました。
ここではあえて「送り出した」ではなく、「投げた」と表現したいと思います。届くかどうか分からない未来へ、可能性を投げかけるという意味を込めて。
投げたことそのものに意味がある。
私はそう思います。
結果が保証されているものだけに挑戦するのであれば、それはある意味簡単です。
結果が分からない。
成功するかどうかも分からない。
もしかすると、自分が生きている間には答えすら出ない。
それでも、
「やってみよう」
と投げてみる。
そこから初めて、何かが始まるのだと思います。
見えないのなら、見るためのものを作る
そして、中嶋先生ご自身の研究のお話にも、ものづくりに携わってきた私としては非常に興味を持ちました。
宇宙を観測する。
しかし、自分たちが見たいものを観測するための装置が既存のものでは足りない。
だったら、
自分たちで作る。
新たなセンサーや観測機器を開発し、それを実際に宇宙へ送り、今まで見ることのできなかったものを観測する。
「新しいものを作ること」が目的なのではありません。
知りたいことがある。
そのためには今ある道具では足りない。
ならば、目的を達成するための道具から作ろう。
この考え方には、ものづくりに携わる者として非常に共感しました。
さらに、そこには大学の研究者だけではなく、地元の製造企業も参画しているそうです。
大学の最先端研究と、地域企業が持つものづくりの技術。
それらが組み合わさり、やがて宇宙へ飛んでいく。
話を聞きながら、
「下町ロケットならぬ、下町衛星だな」
なんてことまで考えていました。
宇宙はとてつもなく遠い世界です。
しかし、その宇宙へ向かうものを作っている現場は、案外私たちのすぐ近くにあるのかもしれません。
大人になってから、まったく違う世界を覗いてみる
今回、『KGU関内大学』に参加して改めて感じたことがあります。
仕事に直接役立つ話だけを聞く必要なんてない。
普段の自分とはまったく違う世界に触れてみる。
宇宙でもいい。
歴史でもいい。
芸術でもいい。
科学でもいい。
そこで、
「へぇ、面白いな」
と思ったところから、自分なりの問いが生まれる。
今回も宇宙物理学の講義を聞きに来たはずなのに、私は途中から「ものづくり」について考えていました。
それで良いのだと思います。
むしろ、それこそが大人のための教養講座『KGU関内大学』の面白さなのではないでしょうか。
第2回も、すでに告知されています。
次はどんな世界を覗かせてもらえるのか。
今から楽しみにしています。
そして、もう一つの「投げる」
最後に。
今回のイベントでは、参加されていた数名の方々に、私が現在進行形で取り組んでいる「HOTARU SUPPORT」についてお話しさせていただく機会もいただきました。
宇宙の話を聞きに来た場所で、新しい方々と出会い、今度はこちらから自分の取り組みについて話してみる。
これもまた、小さな一つの「投げる」なのかもしれません。
相手にどう伝わったのか。
この先、何かにつながるのか。
そんなことは今の時点では分かりません。
でも、
投げなければ何も始まらない。
このような場を作ってくださった小山学長をはじめ、関東学院大学の多くのスタッフの皆様に、改めてお礼申し上げます。
HAMARISEという場所が、単に場所を利用するだけではなく、
人と出会い、知らない世界に触れ、それぞれが自分の「問い」や「挑戦」を投げてみる場所になる。
今回の『KGU関内大学』第1回に参加して、そんな可能性を感じました。
さて。
ボイジャーは今も、遥か彼方を飛び続けています。
答えが返ってくる保証などありません。
それでも、約半世紀前の人類は宇宙へ投げました。
だったら私たちも、
まずは投げてみればいい。
そこから何が始まるのか。
それを楽しみにしながら。
そして最後に、昨日ちょっと面白い出来事がありました。
今回の『KGU関内大学』は「大人のための教養講座」です。
ところが会場には、一人の学生さんが参加していました。
どうやら本人は学生向けのイベントではないことを知らずに申し込んでしまったようで、会場に来てから気付いたのでしょう。
少々焦った様子で、
「学生なのに参加しちゃいました」
と自己申告。(笑)
どこでイベントの情報を見つけたのかまでは聞きませんでしたが、私はこういう偶然も面白いなと思いました。
そして何より良かったのが、関東学院大学側の対応です。
「これは学生向けではありませんから」
なんて野暮なことは言わない。
ウェルカム。
せっかく興味を持って来たのだから、一緒に楽しめばいい。
こういうところにも、関東学院大学の「器」というか、懐の深さを感じました。
私もその学生さんに、現在進行形で取り組んでいるHOTARU SUPPORTについて、しっかり説明させてもらいました。
すると、普段から親しくさせていただいている研究推進課のMさんが、笑顔で一言。
「会長、こういう子好きでしょう?」
……ドキッ!
完全に私の性格を見抜かれている。(笑)
はい。
おっしゃる通り、こういう学生、大好物です。
間違えたっていい。
勘違いだっていい。
興味を持って、知らない場所へ来てしまった。
結果として、普段なら会わない人たちと出会い、普段なら聞かなかった話を聞くことになった。
そんな偶然から何かが始まることだってあります。
考えてみれば、この学生さんもまた、
とりあえず一球、投げちゃった人。
だったのかもしれません。
そして、その球を大学が受け取った。
こういう予定外の出来事が起きる場所。
それもまた、HAMARISEの面白さなのかもしれませんね。
追記:
昨日の講座の中で、太陽フレアについてのお話がありました。
太陽活動には約11年の周期があり、活動が活発になると黒点が増え、太陽フレアなども起こりやすくなる。
さらに、太陽から飛んでくる高エネルギー粒子などに対して、地球は磁場によって作られる磁気圏によって守られている。
そんな話を聞きながら、宇宙物理学などまったくの素人である爺さんの頭に、ある疑問が浮かびました。
「待てよ。これだけ太陽が活発になっているなら、世間で騒がれている地球温暖化にも相当影響しているんじゃないの?」
昨日は声には出しませんでした。
そして今朝。
どうにも気になったので、改めて調べてみました。
すると、私が頭の中で勝手に作っていた話とは少々違いました。
太陽活動そのものが地球の気候に影響を与えることはあります。
しかし、約11年の太陽活動周期による太陽からの総放射エネルギーの変動幅は、およそ0.1%程度。
現在進んでいる地球温暖化の主因を、太陽フレアや現在の太陽活動に求めることは、観測結果とは合わないようです。
そこで爺さん、今度は、
「なるほど! 地球の磁気バリアが太陽からの熱を遮断しているからか。バリアすげぇ!」
と、また勝手に納得しかけました。
ところが――
これも違った。(笑)
地球の磁気圏は、太陽から飛んでくる荷電粒子などの進路を曲げたり、受け流したりする重要な役割を果たしています。
しかし、太陽から届く「熱」を壁のように遮断しているわけではありません。
X線などの電磁波に対しては、地球の大気も重要な役割を果たしている。
なるほど。
磁気圏もすごい。
大気もすごい。
結局、地球すげぇ!
という、実に爺さんらしいところへ着地しました。(笑)
しかし、なぜ昨日の講座の続きを、翌朝になってまでやっているのでしょう。
理由は簡単です。
自分の中で間違った結論を出したまま、放置したくなかったから。
知らないことは、知らなくてもいいと思っています。
疑問を持つことだって自由です。
「ひょっとしたら、こうなんじゃないか?」
と、自分なりに考えてみるのも面白い。
でも、そこで勝手に、
「そういうことか!」
と決めつけて終わらせるのではなく、
「待てよ。本当にそうなの?」
と、もう一度調べてみる。
違っていたら、
「なんだよ。違うのか!」
と修正すればいい。(笑)
知らなかったことよりも、間違ったことを「分かったつもり」で持ち続ける方が、私は嫌です。
考えてみれば、これこそ今回の『KGU関内大学』の案内にあった、
「自ら本質的な『問い』を立てる力」
なのかもしれません。
昨日の講座そのものは終了しました。
しかし、そこで生まれた「?」は、今朝まで続いていました。
短い時間の講座だったのに、翌朝になってもまだ遊ばせてもらっている。
そう考えると、実に面白い講座でした。
そして、ここでもう一つ思い出しました。
昨日、本来は「大人のための教養講座」である今回のイベントに、一人の学生さんが参加していました。
どうやら学生向けのイベントではないことに途中で気付いたようで、少々焦った様子で、
「学生なのに参加しちゃいました」
と自己申告。
ところが大学側は、
ウェルカム!
せっかく興味を持って来たのだから、一緒に楽しめばいい。
そんな雰囲気で迎えられていました。
だったら今度は逆に、
爺さんが間違って中嶋先生の学生向け講義に参加してみるか?
後ろの席にこっそり座って、
「ほうほう……」
「なるほど……」
「ん?」
「全然分からん!」
そして最後には、
「先生!質問です!」
……。
まあ、その頃には大学のスタッフの誰かが飛んできて、
「会長、何してるんですか!」
と強制退場させられることでしょう。(笑)
もちろん冗談です。
でも、大人になってから、自分とはまったく違う世界を学んでみる。
分からないから疑問を持つ。
自分なりに考えてみる。
間違っていたら調べ直す。
すると、そこからまた新しい「?」が生まれる。
昨日の『KGU関内大学』は、宇宙について教えていただいただけではなく、
「知らないことを知るって、やっぱり面白いな」
という、ごく当たり前のことを改めて感じさせてもらった時間だったのかもしれません。
中嶋先生、小山学長。
爺さんの宇宙講座は、翌朝まで勝手に延長戦に突入しておりました。(笑)
そして、いろいろ調べて少しだけ理解した現在の結論は――
バリアすげぇ!
……ではなく、
地球すげぇ!
でございます。
