まだ見ぬ景色を見たい。未来の農業から考えた、日本のものづくりと技術継承

昨夜、テレビ東京の『ガイアの夜明け』を見ました。

2026年10月30日放送の「ニッポン発!世界で稼ぐ」というテーマで、未来の農業に挑戦する企業が紹介されていました。

私が見たのは番組の前半、イチゴ栽培の部分だけです。

そこで紹介されていたのが、アメリカで植物工場によるイチゴの生産を実現した「オイシイファーム」という企業。

温度や湿度、光などを制御し、受粉に必要なハチの行動までAIで管理するという取り組みです。

そして今度は日本で、さまざまな企業の技術を結集し、さらなる挑戦を始めようとしている。

これが実に刺激的でした。

何もない巨大な空間に、未来の景色が見える

特に私がゾクゾクしたのは、大きな建屋の中に新しい研究開発施設を作り上げていこうとする光景でした。

まだ何もない広大な空間。

そこに、これまでにない設備を導入し、新しい農業の形を作り出していく。

当然ながら、簡単なことではありません。

何か月も議論を重ね、技術的な課題を解決し、試行錯誤を繰り返していくのでしょう。

もし私がその場所に立っていたら、何を思い描くだろう。

きっと、まだ何もない空間に、これまで誰も食べたことがないような、べらぼうに美味いイチゴが一面に実っている光景を思い浮かべるでしょう。

私の場合、何か新しいことを始めるときには、必ず頭の中に映像を思い描きます。

しかも、その映像は固定されたものではありません。

考え、行動し、新しい発見をするたびに変化していく。

すると、それまで見えなかった次の景色が見えてくる。

だから、また前に進みたくなるのです。

これからは専門分野に特化したAIが面白い

今回の取り組みを見ながら、AIの未来についても考えました。

世界では巨額の資金を投じ、優秀な技術者を集めて汎用生成AIの開発が進められています。

しかし、私はこれから、それぞれの専門分野に特化したAIが、さらに発展していくのではないかと思っています。

農業なら農業、製造業なら製造業。

AIの知識を持った技術者と、その分野の専門家たちがタッグを組む。

何も巨大な生成AIを一から作る必要はありません。

既存のAI技術を活用しながら、その分野で本当に役立つシステムを作り上げればいい。

日本には、優れた専門技術を持つ企業や技術者が数多く存在します。

そうした人々がAI技術者と協力すれば、日本からもさまざまな新しいシステムが生まれる可能性がある。

私はそう考えています。

もちろん、農業のすべてを植物工場に置き換えるのは、栽培面積や設備費用などを考えても難しいでしょう。

しかし、すべてを置き換える必要もない。

それぞれの栽培方法に適した技術を取り入れていけばいいのです。

日本の町工場に眠る技術を、どう残していくのか

そして、私の思考は日本のものづくりへと広がっていきました。

日本には、長年の経験によって培われた優れた技術が数多くあります。

特に町工場には、世間にはあまり知られていなくても、非常に高度な技術を持った職人さんたちがいます。

しかし、熟練者の高齢化や後継者不足によって、そうした技術が失われてしまう可能性があります。

そこで気になるのが、よく耳にする言葉です。

「最後は職人の勘だよ」

この勘とは、一体何なのでしょう。

音なのか、振動なのか、手に伝わる感触なのか。

あるいは、長年の経験によって無意識に判断している何かなのか。

本人ですら、言葉で説明できない部分があるかもしれません。

しかし、だからといって、そのまま消滅させてしまっていいのでしょうか。

私は、熟練者が健在なうちに、さまざまな角度から技術をデータ化する行動を起こすべきだと思います。

作業の映像、音、振動、温度、力加減、視線の動き。

正常な作業だけでなく、異常を感じた瞬間の判断や、その後の対応。

可能な限り記録しておく。

ただし、データを収集しただけで技術を継承できたと思ってはいけません。

ここが非常に重要だと考えています。

熟練者がいる間に、再現してみる

記録したデータを基に、実際にその技術を再現してみる。

人による再現でも、AIや機械設備を活用した再現でも構いません。

そして、その結果を熟練者自身に評価してもらう。

「そこが違う」

「その音ではない」

「仕上がりは似ているけれど、何かが違う」

そうした指摘を受け、さらに記録し、分析し、再現を繰り返す。

もしかすると、職人さん自身が気づいていなかった判断材料が見つかるかもしれません。

もちろん、その時点の技術では再現できないものもあるでしょう。

AIの解析能力が追いつかない。

あるいは、解析できても、それを実現する機械や設備が追いつかない。

それなら、時間をかけて淡々と進めればいい。

今は再現できなくても、将来の技術で再現できる可能性があります。

そのためにも、成功した記録だけでなく、失敗した結果や未解決の課題も残しておく。

ただし、熟練者本人に確認してもらえる時間には限りがあります。

だから、再現が完成するのを待つのではなく、熟練者が健在なうちに再現への挑戦を始めることが大切なのです。

町工場任せではなく、行政も一緒に

例えば、東京都大田区。

日本を代表するものづくりの集積地の一つです。

大田区では行政と産業振興協会などが連携し、事業承継や技術継承に取り組んでいます。

私は、こうした地域の取り組みに、日本の未来への希望を感じます。

そして、さらに考えてみたいことがあります。

もし、後継者がいない町工場に、どうしても後世へ残すべき技術があったらどうするのか。

その企業が廃業するからといって、貴重な技術まで失われてしまうのは、あまりにも惜しい。

企業としての存続と、技術そのものの存続は、分けて考えることも必要ではないでしょうか。

そこで、国や自治体の出番です。

個々の町工場だけに負担をかけるのではなく、行政が技術の記録やデータ収集を支援する。

必要なら、大学や研究機関、民間企業とも協力する。

そして、後継者がいない技術については、収集したデータを基に、将来の再現を目指す取り組みを始めてみる。

一つの町工場をモデルケースにしてもいいでしょう。

もちろん、企業の大切な技術情報を勝手に公開するわけにはいきません。本人や企業の同意、知的財産の保護、適切な対価も必要です。

ただ、こうした仕組みを作ることができれば、今までとは違う技術継承の道が開けるかもしれません。

横浜の企業の爺さんが、大田区のことに口を出す話でもありませんがね。(笑)

でも、私はこういう未来を思い描くのです。

後継者は、人から人だけの時代ではない

これからの技術継承は、従来のように熟練者から若手へ、長い年月をかけて教える方法だけではなくなるでしょう。

AIやデータ、ロボット、機械設備が、その間に入ってくる。

しかし、私は決して、AIや機械設備にすべてを任せればいいとは思っていません。

そこには必ず、技術を受け継ぐ人間の存在が不可欠です。

技術を理解し、判断し、応用し、さらに進化させていく人。

その存在がなければ、単なる作業の再現で終わってしまうかもしれません。

大切なのは、過去の技術をそのまま保存することだけではない。

次の世代が、その技術を使って新しいものを生み出せるようにすること。

そして、ここで私が強く思うことがあります。

必要なのは、努力という言葉だけではなく、行動です。

熟練者がいなくなってからでは、聞きたくても聞けません。

だから、できるところから始める。

今できないことは、将来できるようになるまで研究を続ければいい。

でも、今しか残せないものは、今残さなければならないのです。

ものづくりは、どうにもやめられない

さて、こんなことを考えている私ですが、実は自分自身も日々、ものづくりの世界で試行錯誤しています。

現在取り組んでいる「HOTARU SUPPORT」もその一つです。

私はデザイナーでもCGクリエイターでもありません。

だから、最終的なデザインは専門家にお願いしようと考えています。

ところが、困ったことに細かい部分が気になってしまう。

昨日も、ホタルの灯を包み込むアメーバ状のデザインを考えていました。

当初は、すべての灯を同じ形の内側に収めようとしていたのですが、内側と外側に分ける発想へ切り替えてみた。

すると、それまでとは違う、ずっと面白い世界が見えてきたのです。

そうなると今度は、アメーバの形そのものにまでこだわりたくなる。

もう少し曲線を変えたら?

こっちの形の方がいいんじゃないか?

専門家に任せると決めたはずなのに、いつの間にかまた自分で細かいところを考えている。

まるで『相棒』の杉下右京さんです。

「最後にもう一つだけ……」

いやいや、あんた、それもう10個目でっせ!

そんな声が聞こえてきそうです。(笑)

でも、これが愉しい。

私は、ものづくりにおいて「こうでなければならない」という固定観念を持ちたくありません。

頭の中には実現したい光景があります。

しかし、その光景は新しい発見によって、どんどん変化していく。

そして、その先にまた違う景色が現れる。

その次の景色を見るために、私は前へ進むのです。

悔いを残しながら、最後まで愉しむ

今回の『ガイアの夜明け』を見て、改めて感じたことがあります。

世の中には、本当に凄い人たちが大勢いる。

しかも、多くの人々には知られていないところで、新しい技術に挑戦し、未来を切り開こうとしている人たちがいる。

そういう人たちの姿を見ると、刺激を受けます。

まだまだ知らない世界がある。

まだまだ面白いことがある。

まだまだ自分にもやってみたいことがある。

しかし、自分の寿命だけは自由に決められません。

きっと、やりたいことをすべて実現することなどできないでしょう。

それでもいいのです。

一つ実現すれば、また次の景色が見えてしまうのですから。

人生の最後まで、まだ見ぬ景色を追いかける。

そして、きっと悔いも残るでしょう。

「あれもやりたかったなあ」

「もう少し先の景色を見たかったなあ」

そんな思いを抱きながら。

でも、それも私らしい人生なのかもしれません。

悔いを残しながら、最後の最後まで人生を愉しむ。

そして、また新しい景色を見つけてしまう。

困ったものです。

ものづくりは、どうにもやめられません。(笑)


参考:テレビ東京『ガイアの夜明け』2026年10月30日放送「ニッポン発!世界で稼ぐ」前半のイチゴ栽培に関する内容

https://www.tv-tokyo.co.jp/plus/business/entry/202610/20346.html

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創業50期目、横浜のIT企業ハル・エンジニアリング株式会社、代表取締役会長の平田達彦です。2026年年1月21日付けで、同業IT企業システム二コル株式会社の社外取締役に就任いたしました。ブログにて色々な情報を発信させて頂きます。「自由人として愉しむ」を基本に生きています。多くの人たちと絡んでいきたいと考えていますのでどうぞよろしくお願いいたします。愉しい人と人のネットワークの構築と愉しいものづくりを目指します。 ※ちなみに私のお渡しする名刺の裏側には怪しい鳥が羽ばたくイラストが描いてあります。それは会長ならぬ怪鳥を表しています。日々怪しく飛び回る鳥の如くなのです。(笑)

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