「リベンジ成功、そして請求書」
3Dプリンターを使い、TPU素材の設定と格闘していた。
温度か?
速度か?
リトラクションか?
柔らかい素材というのは実に気難しい。
ようやく形になったと思えばサポート材が剥がれない。
剥がそうとすれば本体まで傷つけそうになる。
朝から爺さんは頭を抱えていた。
そんな時である。
一通の封筒が届いた。
差出人は特許庁。
「おや?」
封を開く。
中身を確認する。
どうやらまた一つ、特許取得に関する通知らしい。
今年に入って何件目だろう。
正直、自分でもよく分からない。
そこでふと脳裏に浮かんだのが、私の尊敬する発明家、ドクター中松御大である。
私はドクター中松御大が好きだ。
九十歳を超えた今なお発明家の道を歩み続け、取得した特許を不敵な笑みを浮かべながら堂々と自慢する。
実に素晴らしい。
全くもって「控え目」という文字とは縁遠い。
しかし私はそこが好きなのだ。
発明家たるもの、
「こんなものを考えた!」
「面白いだろう!」
「凄いだろう!」
と胸を張って言っても良いではないか。
そこで私も御大の真似をしてみた。
画像をご覧いただきたい。

特許庁からの通知を手にした私である。
ドクター中松御大の真似をしているに過ぎない。
だが我ながら、それなりに見るに堪えうる姿ではないだろうか。
しかもこれは単なる取得通知ではない。
以前、一度拒絶理由通知を受けた案件である。
つまり今回はリベンジ成功なのである。
そう考えると少々誇らしい。
ところが。
現実というものは甘くない。
今になって少々焦っていることがある。
またもやお金が必要なのである。
今回の封筒は、
「おめでとうございます。」
だけでは終わらない。
その直後に、
「では登録料をお願いします。」
という実に現実的な話が続いている。
しかも私は電子納付ではなく、封書で提出する予定だ。
すると特許印紙を購入しなければならない。
特許印紙を買うためには現金が必要だ。
現金を手に入れるためには総務へお願いしなければならない。
ここが面倒なのである。
悪いことをしているわけではない。
むしろ良いことをしている。
なのに、
「総務さん、お金ください。」
という話になる。
当然こうなる。
「何のお金ですか?」
「特許印紙代です。」
「特許印紙?」
「特許庁へ提出するためです。」
「取得できたんですか?」
「できました。」
「いくらですか?」
説明会の開催である。
実に面倒だ。
格好良く、
「もちろんポケットマネーです。」
と言いたいところだが、残念ながらPM(ポケットマネー)の域を超えているではないか。
仕方がない。
私は近いうちに総務へ向かう。
そして深々と最敬礼しながら、
「誠に恐縮ですが、特許印紙代のご支援をお願いできませんでしょうか。」
とお願いする予定である。
発明も大切。
夢も大切。
だが、その前に支払いはもっと大切なのである。
所詮、貧乏な爺さんの現実とはそんなものだ。
それでも懲りずに次のアイデアを考えているのだから、我ながら救いようがない。
さて。
次は何を作ろうか。
