「あの時、誰一人逃げなかった。」
49期目の決算報告会を迎える今日という日。
私は毎年、この時期になると、ある壮絶なプロジェクトの事を思い出す。
某役所の大型システム案件。
最初に受注した企業が「出来ない」と投げ出した案件だった。
複数人の技術者が現地へ向かい、状況を確認して戻ってきた。
「出来ません。」
「かなり厳しいです。」
「いや、やれると思います。」
意見は様々だった。
さらにマネージャー格からは、
「恐らく提示されている予算の2倍くらいの工数はかかると思います。」
という報告もあった。
私はその時、
“倍か・・・。でもチャレンジしても良いかもしれない。”
そう思ってしまった。
そしてGOを出した。
最初は良かった。
お互いに良いキャッチボールが出来ていた。
しかし、次第に仕様変更が増え始める。
追加仕様。
運用変更。
気づけば、最初の仕様書は「使い物にならないフォルダー」に移動されるほど内容が変わっていた。
技術者たちは真面目だ。
「出来ません」とはなかなか言わない。
それどころか、
「こうした方が良いと思います。」
「こちらの方が使いやすいです。」
と、より良い方向へ提案を続ける。
しかし、その“善意”が積み重なり、プロジェクトはどんどん膨れ上がっていった。
最大16名ほどの社員が関わっていたと思う。
そして、社員たちは疲弊していった。
プロジェクト開始から3年。
私は危機感を抱いた。
“このままでは会社が倒れるかもしれない。”
そこで、専属担当を1名へ絞り、先方へ提案した。
「1年でやる内容ではありません。3〜4年かけてやらせてください。」
(一方的に線表を引いて提出)
その提案を、先方は受け入れてくださった。
そして、長い時間をかけ、最終的に完成へ辿り着いた。
あの時の事を思い出すたびに感じる。
誰一人、逃げなかった。
過酷な状況の中でも、踏ん張り続けてくれた。
直接関わった社員たち。
そして、その裏側で会社を支え続けてくれた全社員。
本当にありがとうございました。

今、ハル・エンジニアリング株式会社は健全化し、気づけばあれから6〜7年が経った。
しかし私は、決算の時期になると、あの時の戦いを忘れる事はない。
あの経験があったからこそ、
現金の大切さも、
無理な受注の怖さも、
交渉の重要性も、
社員を疲弊させてはいけない事も、
全部、身をもって学ぶ事が出来た。
そして何より、
“会社は一人では絶対に守れない”
という事を知った。
49期目。
改めて、共に戦い抜いてくださった皆様へ。
本当にありがとうございました。
