「たった一本の情報だった。でも貴重な情報交換だった」
今日、AI関連の展示会へ足を運んできました。
正直に言えば、早々に会場を後にしました。
AIの台頭によって、若い技術者を中心とした企業が本当に増えました。
会場では、パンフレットを手に、
「資料だけでもどうぞ!」
と声を掛けてくる。
ノベルティを配りながら、なんとかブースへ足を止めてもらおうとする。
もちろん、出展する側も必死です。
でも私は、欲しい資料なら自分からもらいます。
興味を持てば、自分から話を聞きます。
だから少々疲れてしまいました。
しばらくAI関連だけの展示会とは、少し距離を置いてもいいかな。
そんなことを考えながら会場を歩いていました。
ただし――。
せっかく新宿まで来たのです。
何も得ずに帰るのも面白くない。
そんな中、ひとつ気になる言葉が目に入りました。
「質の高いIT教育をすべての人に」
AIではありません。
私が引っ掛かったのは「教育」でした。
そこで担当の方に聞いてみました。
「ITの集合教育なんて、世の中にたくさんありますよね。御社の教育は何が違うんですか?」
話を聞いてみると、これが面白かった。
この会社には多くの現役技術者がいて、その技術者たち自身が講師を務めるというのです。
研修だけを専門にしている講師ではありません。
普段は現役の技術者として、実際のものづくりに携わっている人たちです。
通常の技術者としての仕事である程度の収益を上げながら、その経験と技術を教育にも活かす。
そのため、教育事業だけですべての人件費を回収する必要がなく、研修料金も抑えられるという説明でした。
なるほど。
私はここで、AIそのものよりも、このビジネスモデルに興味を持ちました。
実は私自身、随分前から似たようなことを考えていました。
IT企業では、年齢を重ねた技術者が、それまでと同じように客先で仕事を得続けることが難しくなる場合があります。
では、長年培ってきた技術や経験を別の形で活かせないだろうか。
例えば、
技術講師として若い人たちを育ててもらう。
そんな収益の作り方があってもいいのではないか、と。
もちろん、誰もが講師に向いているわけではありません。
技術力が高いことと、人に教えることが上手なことも同じではありません。
それでも、技術者の価値を、
「客先で何時間働いて、いくら売上を上げるか」
だけで考える必要はないと思っています。
作ることができる。
教えることができる。
若い技術者を育てることができる。
自分の経験を次の世代へ渡すことができる。
それらも立派な技術者の価値です。
さらに話を聞いてみると、この会社は生成AIブームに乗って突然AI教育を始めた企業ではありませんでした。
機械学習の時代から、長年この分野に取り組んできたとのこと。
ここでも、
「なるほど」
と思いました。
ちゃんと下地がある。
だから現在の生成AIへと自然につながり、その技術を教育という別のビジネスにも展開できているのでしょう。
今日の展示会で、じっくり話をした企業は結局ここだけでした。
たった一本の情報です。
でも私にとっては、とても貴重な一本でした。
帰り際、担当してくださった方に自然と、
「大変勉強になりました。ありがとうございました!」
と言っていました。
展示会は、何十社回ったかではない。
パンフレットを何十枚集めたかでもない。
名刺を何十枚交換したかでもない。
たった一人との会話から、
「そんな考え方もあるのか」
という新しい景色を見ることができれば、それで十分なのだと思います。
そして、その一本の情報を自分の会社に置き換えて考えてみる。
すると、また違うアイデアが生まれる。
技術者は、客先へ出て仕事をするだけなのか。
社内でものを作ることもできる。
若い人を育てることもできる。
自分たちで新しい製品を生み出すこともできる。
そしてAIによって、その選択肢はさらに増えていくでしょう。
一人の技術者に、一つの働き方しかない。
そんな時代では、もうないのかもしれません。
今日、新宿まで足を運んで得たものは、新しいAIの知識ではありませんでした。
技術者が持っている価値を、どう別の価値へ変えていくのか。
その一つの実例を見せてもらいました。
だから今日もまた、
大変勉強になりました。

