大学見本市。研究を見るより、話す方が面白かった。
今日は東京ビッグサイトで開催された大学見本市へ行ってきました。
まず会場に入る前に驚いたのが、持ち物検査に身体検査。

「えっ、大学見本市ってここまでやるの?」
さらに会場内には撮影禁止の表示もありました。
仕方がないので、気になったブースではリーフレットをいただきながら回ることにしました。
ただ、今日は研究成果をたくさん持ち帰ろうというつもりではありませんでした。
気になるキーワードが目に入ったら立ち止まり、説明を聞いてみる。
そして気になったことを質問する。
そんな感じで会場を歩きました。
AIでバグが見つかる。では、全部直すのか?

東京電機大学のブースでは、「ローカルAIを活用した自動バグ修正システム」という研究が展示されていました。
説明を聞くと、AIの台頭によって、これまで見つからなかったシステムのバグも容易に発見できるようになる。
そうなると、今度は修正する仕事が増えて忙しくなる。
なるほど。
でも私は、少し違うことを考えました。
過去に私が開発に携わったシステムで、使用していたOSにバグが発覚したことがあります。
では、新しいOSに載せ替えればいいのか。
そう簡単ではありませんでした。
確かにOSにはバグがある。
しかし、そのOS上で現行システムは問題なく動き、多くの場所ですでに運用されている。
新しいOSへ載せ替えた結果、別の問題が発生するかもしれない。
さらに、現在と同じレベルまで安定して動かすために、どれだけの工数が必要になるのかも分からない。
結果として、そのまま使うという判断になりました。
AIによってバグを発見しやすくなることは、とても良いことだと思います。
新しく作るシステムなら、なおさら有効でしょう。
でも、
「バグが見つかった」=「必ず直す」
ではない。
長く動いてきたシステムには、また別の判断がある。
そんな現場側からの話をさせてもらいました。
えっ、今でも手書きなんですか?

久留米大学のブースでは、「オペレコ作成支援システム」という展示がありました。
オペレコとは、手術の内容を記録として残すものです。
そこで聞いて驚きました。
手術後、外科医が手術の内容をイラストとして描いて記録しているというのです。
しかも、その作業にかなりの時間を要することもある。
思わず、
「えっ、今でも手書きで、そんなに時間をかけているんですか?」
と驚きました。
もちろん、実際に手術を行った医師が正確な記録を残すという意味では納得できます。
私が驚いたのは、そこではありません。
これだけIT化が進んだ現在でも、そんなところに時間のかかる手作業が残っていたことです。
そこで久留米大学では、血管などを「なぞる」、臓器や医療機器を「置く」といった操作によって、オペレコのイラスト作成を支援する仕組みを研究されていました。
しかも特許も取得されているとのこと。
これは面白い。
同時に私は別のことを考えていました。
世の中には、まだこんなブルーオーシャンが残っているんだ。
最先端の技術ばかり追いかけるのではなく、
「えっ、今でもそんなことを手作業でやっているの?」
という場所を探してみる。
そこには、まだ誰も気づいていないビジネスの種があるのかもしれません。
自分たちも、そんな「今どき、まだ?」を見つけなければ。
植物と会話できたら面白くないですか?

埼玉大学のブースで目に留まったのが、
「植物の音をとらえる」
という言葉でした。
植物の茎や根の中で発生する微細な音をセンサーで捉え、植物の状態を知ろうという研究です。
これは面白い。
説明してくださった先生に、素人丸出しでこんな話をしてみました。
「このセンシング技術、来年の園芸博に展示されるいろいろな植物で使ったら、何か面白いことができませんかね?」
先生も「おおーっ」という反応。
そこで、
「何か思いついたら連絡してもいいですか?」
と聞いたところ、大学の名刺と、この研究に関係する会社のCEOの名刺までいただきました。
私の頭の中では、さらに勝手な想像が始まっています。
人間の言葉を植物が話すわけではありません。
でも、植物が発している信号を人間に分かる形へ変換できたらどうでしょう。
植物と人間が“会話する”ような世界。
園芸博までに何かできるかどうかは分かりません。
できなくてもいい。
まずは仕込み、いや、仕掛けです。
これ、地元だったら作ってくれる会社を探すのにな

高知工科大学では、
「脳波位相に合わせた刺激法の開発」
という研究に足が止まりました。
私が引っ掛かったのは「記憶成績」という言葉。
睡眠中の脳波を捉え、適切なタイミングで刺激を与えることで、記憶への効果を検証しているそうです。
実験では学生さんを対象にしているとのことだったので、
「もう少し年齢の高い人でも試してみたら面白いのでは?」
なんて話をしました。
さらに実験に使っている機器の話を聞いているうちに、ものづくり屋の頭が動き始めました。
聞く限りでは、もっとコンパクトで使い勝手の良いものが作れそうに思えます。
「地元の企業を巻き込んで、一緒に作ってもらったらどうですか?」
ところが、そういう企業とのつながりがなかなかないとのこと。
高知だけでなく、愛媛あたりまで広げて探してみたらどうでしょう、なんて話にもなりました。
そのとき私は思いました。
これが自分の地元だったら、作れそうな企業を探してあげるのにな。
大学には研究があります。
企業にはものを作る力があります。
でも、お互いを知らなければつながらない。
技術だけではなく、人と人、大学と企業をつなぐことも大切なんだなと改めて感じました。
「AI=生成AI」になっていた自分

そして筑波大学。
ここで今日は逆に、私自身が一つ気づかされました。
最近、「AIを使う」と聞くと、私はどうもChatGPT、Gemini、Copilot、Claudeなどの生成AIを基本に考えるようになっていました。
説明の中で、
「AIの部分も自分たちで作っています」
という話が出たとき、最初は、
「いやいや、そんなもの自分たちで作れるの?」
と思ったんです。
でも、話を聞いていて気づきました。
私が勝手に、
AI=生成AI
と考えていただけだったんですね。
何でも答えられる必要なんてない。
文章を書ける必要もない。
プロンプトを使って、ああだこうだと指示する必要もない。
ある特定の分野、ある特定の目的だけに絞ったAIなら、自分たちで作ることもできる。
そして、その狭い世界だけを見れば、世の中に広く使われている汎用的な生成AIより高い性能を発揮することだってある。
これは私にとって今日の大きな収穫でした。
最近、AI関連の展示会をいくつも見ていたこともあって、知らず知らずのうちに自分自身の考えまで生成AI寄りになっていたようです。
「AIを使う」ことと「生成AIを使う」ことは同じではない。
当たり前のことなのかもしれません。
でも、人間というのは知らないうちに考えが偏るものですね。
大学の研究者にこちらから好き勝手なことを言って歩いていた爺さんが、最後は自分の考えを軌道修正してもらいました。
やっぱり、話してみないと分からない
もちろん、ほかにも気になった研究はありました。
ただ、ブースにいる説明員の皆さんが、すべての質問に答えられるわけではありません。
少し突っ込んだ質問をすると、研究内容を詳しく説明できる方に代わっていただくこともあります。
その方が別の来場者へ説明していれば、当然待つことになります。
限られた時間ですから、すべてを深掘りすることはできませんでした。
それでも今日、改めて思いました。
展示会というのは、たくさんの展示を見ることだけが目的ではないのでしょう。
気になったら足を止める。
分からなければ聞く。
思ったことがあれば、こちらからも投げてみる。
すると、相手からまた違うボールが返ってくる。
研究を見るより、研究している人と話す方が面白い。
今日もいろいろなボールを投げ、いろいろなボールを受け取って帰ってきました。
さて、そのボールがこの先どこにつながるのか。
今はまだ分かりません。
だから面白いんです。
To be continued…
