天下無敵のファブリーズが負けた日
これは、過去の事例を信じ込み、さらに「ファブリーズ最強説」を信じて疑わなかった男の悲しい物語である。
ある日、出かけようと車に乗り込むと、車内に耐えがたき異臭が充満していた。
しかし私は慌てなかった。
犯人は分かっている。
我が家のお殿様、ぽぽまる君である。
なぜなら過去に何度か、車内のどこかに「例のもの」を仕込んでくれた前科があったからだ。
「きゃつ、またやりやがったな……」
私は疑うことなく、そう結論づけた。
ちょうど買い物に行く予定だったので、この忌まわしき異臭を根こそぎ排除してやろうと、消臭剤の王者、天下無敵のファブリーズを購入。
そして車へ戻るや否や、
シュシュシュシュ……。
座席にも。
足元にも。
車内の至るところに、
シュシュシュシュポポポポ……。
これでもかと撒き散らした。
勝った。
私はそう思った。
ところが――。
臭い。
まだ臭い。
天下無敵、完全無欠であるはずのファブリーズが、
まったく歯が立たない。
どういうことだ?
ファブリーズ最強説が、私の中で音を立てて崩れていく。
衝撃を受けながらも、なんとか自宅まで帰り着いた。
そして車を降りようとした、その瞬間。
私は見つけてしまった。
一つの袋を。
…………。
そう。
以前ぽぽまる君の散歩へ車で出かけたとき、彼が生産した「例のもの」を袋に入れて持ち帰り――
そのまま車内に置き忘れていたのである。
にょ~~~~~~~~っ!!
ぽぽまる君。
無実。
真犯人。
私。
考えてみれば、この一件はなかなか面白い。
私は最初に異臭を感じた瞬間、過去の経験を思い出した。
「以前もぽぽまるだった」
だから、
「今回もぽぽまるだ」
と決めつけた。
そして次に、
「臭いならファブリーズだ」
「ファブリーズなら消える」
という、これまた自分の中に出来上がっていた思い込みに従って、ろくに原因を探しもせず購入し、車内へ噴射しまくった。
過去の前例から犯人を決めつけ、
自分の成功体験から解決方法まで決めつけた。
そのどちらも、一度立ち止まって確かめようとはしなかった。
結果として私は、自分で置き忘れた「臭いの発生源」を車内に残したまま、その周辺にファブリーズを撒き散らしていたのである。
そりゃ勝てんわ。(笑)
過去の経験は大切だ。
成功体験だって大切だ。
でも、それを信じすぎると、
「今回も同じに違いない」
という思い込みになる。
本当なら最初にやるべきことは一つだった。
原因を探せ。
ただそれだけである。
ちなみに、この事件で最も大きな被害を受けたのは私でもファブリーズでもない。
何の罪もないのに、最初から最後まで犯人扱いされた――
我が家のお殿様、ぽぽまる君である。
謹んでお詫び申し上げます。
<m(__)m>
……これ、笑い話で終わらせても十分面白いんですが、仕事やものづくりにもそのまま刺さる話なんですよね。
「前もこうだったから今回もそうだろう」
「この方法なら今までうまくいったから今回も大丈夫」
そして、原因を見る前に対策を始める。
笑っている場合じゃないくらい、われわれ普通にやりますからね。
まさかうんぴー袋から教訓を得る日が来るとは。
ぽぽまる先生、恐るべし。🤣

