図面を出せば、モノになる世界へ ― 町工場で見えた現実 ―
人生で初めて、京浜急行の雑色駅に降り立った。

目的はただ一つ。
大田区産業振興協会さんからご紹介いただいた、株式会社ハタダさんを訪問するためである。
駅名だけを見ると、正直なところ「どんな場所なのだろう」と思った。
しかし降りてみると、そこにはいつも電車の窓から眺めていた多摩川の土手が広がっていた。



ほんの少し、その土手を歩く。
そして石段を降りると――
わずか30秒ほどで目的地に到着した。

株式会社ハタダ。
企業紹介にはこうある。
「私達は、トータルゴムメーカーです」
一見すると、ソフトウェア開発を主とする我々ハル・エンジニアリングとは接点がないように思える。
しかし今、私が進めているプロジェクトにおいては違う。
むしろ、
「ここでなければ出来ないかもしれない」
そう感じさせる存在だった。
迎えてくださったのは、畑田社長と生産技術担当の方。
まずは、こちらが持参した試作品を見ていただく。
3Dプリンターで出力した、まだ荒削りな形。
だが、話はすぐに核心へ入った。
「図面をいただければ、そのまま抜きます」
この一言で、空気が変わった。
つまり――
図面=製品
ごまかしは効かない。
曖昧さも通じない。
こちらが描いたものが、そのまま現実になる。
今回の試作は極めてシンプルなものにする。
余計な出っ張りはつけない。
まずは“抜き”で形状を確認する。
そしてもう一つ、重要な指摘をいただいた。
T字の接合部分。
ここに角があると、使う人にとっては引っかかりとなり、リスクになる。
だからこそ、
丸みを持たせること
これは単なる加工上の話ではない。
使う人への配慮そのものだ。
さらに素材についても、実物を触らせていただいた。
透明なゴム。
おそらくシリコン系の素材だろう。
厚みは2mm。
手に取った瞬間、その違和感のなさに少し驚いた。
思っていたよりも硬すぎず、柔らかすぎず、
日常で使うものとして、ちょうどよい感触だった。
この感覚は大きい。
試作としては、
2mmでも十分成立する。
その道のプロであるがゆえに、いただいたアドバイスはどれも実に的確だった。
視点が違う。
見ている場所が違う。
異業種の方との会話はいつもそうだが、今回もまた大いに学ばせていただいた。
今回の試作についても同様である。
すべてを丸投げするのではなく、
予算という現実も踏まえながら、自分でできることは自分でやる。
自然とそういう流れになった。
そしてふと思う。
こういうものづくりは、やはり良い。
相手はプロ中のプロである。
技術的に「出来ない」という話は、ほぼ出てこない。
むしろ「どうやれば出来るか」という話になる。
だが、そこに必ずついてくるのが“現実”だ。
コスト。
構造。
加工方法。
だからこそ今回いただいたアドバイスが心に残った。
いきなり完成形を目指すのではない。
まずは作る。
そして触る。
使ってみる。
その上で、
ああだこうだと試行錯誤しながら、
少しずつ、自分たちが本当に目指す形へと近づけていく。
まさにその通りだと思った。
これでまた一歩、前に進んだ。
試作品を作ることで、
第三者に対して「自分はこういう考えを持っている」ということを、
より具体的に伝えることができる。
資料で説明することも大切だ。
言葉で伝えることも必要だ。
だが、それだけでは届かない部分がある。
実際に手に取ってもらう。
触ってもらう。
動かしてもらう。
その瞬間、伝わり方が変わる。
「なるほど、こういうことか」
そう感じてもらえたとき、
初めて共有されたと言えるのかもしれない。
資料は“理解”を促す。
だが、試作品は“体感”を生む。
だからこそ、ものづくりは面白い。
まだこれは試作に過ぎない。
だが、この小さな一歩が、確実に次につながる。
そして最後に。
大田区の企業3500社の中からご縁をつないでいただいた
大田区産業振興協会の皆様、
そして本日、新たなご縁をいただいた
株式会社ハタダ 畑田社長に、
この場をお借りして心より御礼申し上げます。
