見ればわかる。使えればなお良い。—ユニバーサルデザインと私の現在地—

今進めているプロジェクトで、絶対に外せない軸があります。
それが、ユニバーサルデザインです。

ただし、ここで言うユニバーサルデザインは、
よくある「誰でも使えるものを作る」という話だけではありません。

まず最初に目指すのは、
ほとんどの人が“見ただけで理解できること”です。

説明を読まなくても、
言葉がなくても、
なんとなくでもいいから意味が伝わる。

ここが出発点です。

そして次に来るのが、
“使えるかどうか”という話になります。

ここが一気に難しくなる。

使うという行為には、
指の力や視力、状況、心理的な遠慮など、
さまざまな条件が絡んできます。

だから正直に言うと、
“誰でも使える”という状態は簡単には実現できません。

実際に、帯の試作でもそれを痛感しました。

きつめにすれば外れにくいが、外しにくい。
ゆるめにすれば扱いやすいが、安定感に欠ける。

どちらも正解で、どちらも不完全です。

そこで考え方を少し変えました。

物理的に無理なものは、それ以外でフォローできるようにする。

例えば、操作が難しいなら、
そもそも頻繁に操作しなくていい設計にする。

例えば、判断が難しいなら、
光や状態で直感的に伝える。

例えば、一人で完結しないなら、
周囲が自然に補完できる余地を残す。

つまりこれは、
モノ単体のユニバーサルデザインではなく、

“関係性を含めたユニバーサルデザイン”です。

ものづくりである以上、そこには必ず物理的な制約が存在します。

頭の中でどれだけ美しく描けても、
実際に手に取れる形にしようとすると、必ず壁にぶつかる。

だからこそ私は、
これでもかと思うほど、繰り返し、繰り返し作業を行ってきました。

あるときは生成AIの力を借りて形を起こし、
あるときは自分の足で動き、

百円ショップ、ホームセンター、手芸屋など、
あらゆる場所に足を運びながら、少しずつ形にしてきました。

そして今は、町工場の皆さんにも手伝っていただきながら、

“個人の発想”が“現実の形”へと変わる過程にあります。

そんなある日、ふと手が止まりました。

試しても試しても、どこかしっくりこない。
いわゆる“煮詰まる”という状態です。

軽量級の脳みそをたどりながら過去へと舞い戻ったとき、
一人の漫画家の名前が浮かびました。

小林まこと。

私より一歳年下の、天才漫画家です。

締切をよく“オトス”ことでも有名な彼ですが、
その作品には決定的な特徴があります。

セリフがなくても、内容が理解できる。

表情、動き、間、構図。
すべてが意味を持ち、言葉に頼らず物語を伝えている。

ユーモアたっぷりで、実に人間味あふれる表情や行動。

そして何より、
誰が見ても理解できる世界を描いていること。

国も、言語も、年齢も関係ない。
恐らく世界中の老若男女が見ても、同じように伝わる。

しかも彼は、人間だけではありません。

動物たちのその瞬間の表情や行動を、
絶妙に描き分けるのです。

言葉がなくても、
「今、何を感じているのか」が伝わってくる。

その描写を見ていると、
自分の視野の狭さに気づかされます。

そして同時に、

閉じかけていた視界を、両目がん開きにしてくれる。

彼の作品は漫画でありながら、
自分にとってはまぎれもなく

“立派な参考書”です。

世界は違えど、
“どうすれば人に伝わるか”という本質は同じです。

今、彼に伝えたいことがあります。

「おい、締め切り守れよ!」

……いや、違う違う。

気づきをくれて、ありがとう。

道のりは決して平坦ではありません。
むしろ険しい。

それでも迷ったとき、立ち止まったとき、
あなたの作品を思い出し、

進むべき方向を見直すことができる。

これからも時々、あなたの世界を覗きながら、

軌道修正を繰り返していきます。

そして自分は、

見ればわかる。
そして、できるだけ使える。

そんな世界を目指して、
粛々とものづくりを続けていきます。


追記。

あらためてYouTubeで彼の姿を見た。

正直に言うと、
「老けたな」と思った。

……でも、それは自分も同じか。

その瞬間、ふと懐かしい風景が頭に浮かんできた。

講談社の打ち合わせルーム。

何度も足を運んだ、あの場所。

あの空気、あの緊張感、あのやり取り。

遠い昔の出来事のようでいて、
どこか今にもつながっている。

時は流れる。

でも、
あのとき感じたもの、受け取ったものは、
形を変えながら、今も確かに残っている。

そして今日、
その断片がふとつながった。

だからもう一度だけ言わせてほしい。

「締め切り守れよ!」

……いや、やっぱり違う。

ありがとう。

kimamana-jiyujin-1957

創業50期目、横浜のIT企業ハル・エンジニアリング株式会社、代表取締役会長の平田達彦です。2026年年1月21日付けで、同業IT企業システム二コル株式会社の社外取締役に就任いたしました。ブログにて色々な情報を発信させて頂きます。「自由人として愉しむ」を基本に生きています。多くの人たちと絡んでいきたいと考えていますのでどうぞよろしくお願いいたします。愉しい人と人のネットワークの構築と愉しいものづくりを目指します。

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