どんなアイデアも捨てちゃいけない
今日、たまたまFacebookを眺めていたら、「アジャイル」について書かれた投稿が目に入りました。
そこには、
「試す」
「学ぶ」
「改善する」
そして、また「試す」。
そんな流れが書かれていました。
実は先月も、どこかでアジャイルについて書かれたものを目にしています。
そのときにも思ったのですが、世の中には時々、新しい言葉が登場して、
「これからは○○だ」
「○○とはこういうものだ」
と、さまざまな考え方が定義づけされて紹介されます。
もちろん、それを体系化して、誰にでも分かるように言葉にすることには大きな意味があると思います。
でも私は、そんなものを目にするたびに、少し違うことも考えます。
「いやいや、それって別に新しいことじゃないでしょう。みんな昔から普通にやってきたことじゃないの?」
人間というのは、わざわざ名前を知らなくても、仕事や日々の暮らしの中で、いろいろなことを自然に身につけ、実践しているものです。
私自身、「アジャイルという手法を使ってものづくりをしよう」と考えて仕事をしてきたわけではありません。
作ってみる。
「あれ?違うな」と思う。
だったら直してみる。
もう一度作る。
すると、今度は別の何かが見えてくる。
だったら、また変えてみる。
長年、そんなことを当たり前のように繰り返してきました。
だから私にとってアジャイルとは、新しいものづくりの方法を教えてもらったというより、
「ああ、自分たちが昔からやってきたことを、こういう言葉で整理しているんだな」
というのが正直な感想です。
とはいえ、私は今のところ、この考え方には大いに賛同します。
なぜなら、ものづくりにおいて、最初から正解を探すことよりも、まず試してみることが、とても大切だと思っているからです。
そして今朝も、さっそくそんなことをやっていました。
週明けに会社の3Dプリンターで出力するための図面を描き、出力用のデータを作りました。
しかも、いきなり試作品を作るわけではありません。
まず作ったのは、試作品を作る前に確認するためのテストデータです。
「この寸法で本当に大丈夫なのか?」
まず小さなものを作って確かめてみる。
そこで問題がなければ、次の試作品へ進む。
そのための試作データも、すでに作ってあります。
まあ、日々そんなことの繰り返しです。
言い訳をさせてもらえば、私の頭の中にはすでに、実に素晴らしいひらめきがあります。(笑)
ところが、それを実際の形にしようとすると、いくつものハードルが待っています。
これがなかなか、
高杉晋作。
……いや、高すぎます。
だから、試してみる。
そこから学ぶ。
改善する。
そして、また試す。
頭の中にあるものを、一発で完成品にできれば、それに越したことはありません。
でも私は、そんなものづくりをほとんど知りません。
現物を作ると、それまで見えていなかった景色が必ず見えてきます。
だから、また変える。
それを繰り返す。
私にとっては、それが特別な手法なのではなく、長年続けてきた、ごく普通のものづくりです。
ただし。
私は、この流れの中でもう一つ、とても大切なことがあると思っています。
それが、
「どんなアイデアも捨てちゃいけない」
ということです。
試して、学んで、改善する。
その過程では、実にいろいろなアイデアが生まれます。
今回採用するアイデアもあれば、採用しないアイデアもある。
途中でまったく別の方向へ広がっていくアイデアもある。
今の技術では難しいものもある。
お金がかかりすぎるものもある。
そして、その瞬間には、
「これは使わないな」
と思うものもあります。
でも、
「今回は採用しない」ということと、「捨てる」ということは、まったく違います。
今日使わなかったアイデアが、一年後、三年後、あるいはもっと先に、まったく別のアイデアと出会うかもしれない。
技術が進歩して、当時できなかったことが簡単にできるようになっているかもしれない。
新しく出会った誰かの知識によって、突然実現できるかもしれない。
だったら、捨てる必要なんてない。
そこで最近、私はこんなことを考えています。
「自分倉庫」を作っておかなければならない。
会社なら、
「会社倉庫」
でもいいでしょう。
そこには、ものづくりの途中で思い浮かんだアイデアを、採用・不採用にかかわらず、とにかく収納しておく。
そして大切なのは、きれいに整理して収納することではありません。
必要なときに、簡単に取り出せることです。
人間は忘れます。
「あれ、昔こんなこと考えたよな?」
「光を使った何かだったよな?」
「確か、重ねるような話だったかな?」
そんな曖昧な記憶しか残っていないこともあります。
そこでAIです。
ちょっとしたキーワードを投げれば、AIが倉庫の中を探し回り、関連する過去のアイデアをサクサクと、実に簡単に、そして迅速に目の前へ出してくれる。
さらには、
「その話なら、以前こんなアイデアも考えていますよ」
と、自分自身が忘れていたものまで引っ張り出してくれる。
そんな仕組みを作っておきたいと思っています。
忘れてもいい。
でも、なくしてはいけない。
過去のアイデアが、現在のアイデアと出会う。
そこから、また新しい何かが生まれる。
そうなれば、「自分倉庫」や「会社倉庫」は単なる記録庫ではありません。
未来のものづくりの材料庫になります。
私は以前、こんな言葉を考えました。
発散は創造。
収束は決断。
保管は未来への投資。
自由に考える。
たくさんのアイデアを出す。
その中から、今やることを決める。
でも、選ばなかったものを捨てない。
未来のために残しておく。
そして必要になったとき、AIの力を借りて再び取り出す。
そうすれば、ものづくりは一本の線ではなく、過去と現在と未来がつながりながら、ずっと続いていくのかもしれません。
完成したと思ったものだって、私にとっては次の試作品になることがあります。
だから今日も試します。
学びます。
改善します。
そして、その途中で生まれたアイデアも残します。
どんなアイデアも捨てちゃいけない。
今は役に立たないと思っているそのアイデアが、いつの日か、とんでもなく面白いものに化けるかもしれませんからね。
さて。
週明けは、まず3Dプリンターで小さなテストから始めます。
頭の中にある「素晴らしいひらめき」が、本当に素晴らしいのか。
それとも、
「なんじゃこりゃ?」(松田優作さんばりに)
となるのか。
それは現物を作ってみなければ分かりません。
まあ、それも含めて――
ものづくりは愉しいのです。

