沖縄旅行「特別会計」。予算執行率0%で全額返納!その後の行方は……。
私は月々、片手ほどのお小遣いを頂いて、それで十分満足している爺さんである。
我が家の財務省が決めた予算である。
特に不満はない。
欲しいものがあれば、その範囲で買えばいい。
足りなければ我慢すればいい。
そもそも最近は、そんなに欲しいものもない。
そんな私に今回、沖縄旅行を前にして、財務省から通常予算とは別のお金が渡された。
おおっ!
これは一般会計とは別枠の――
沖縄旅行特別会計ではないか!
ありがたくお預かりした。
せっかく財務省から託された大切な予算である。
紛失するなどあってはならない。
そこで旅行中、私はその特別会計をずっとGパンの前ポケットに入れて、大切に管理していた。
そして支払いの場面になるたび、
「来たか!」
と、片手をポケットに突っ込む。
いつでも出せる。
スタンバイOK!

ところが――。
ピッ♪
カードである。
次のお店。
「今度こそ私の出番だな」
片手をポケットへ。
ピッ♪
またカード。
食事をしても、
ピッ♪
買い物をしても、
ピッ♪

私はそのたびにGパンの前ポケットへ手を突っ込み、いつでも特別会計を執行できる態勢を整えていた。
しかし目の前で繰り広げられるのは、財務省による華麗なるキャッシュレス決済。
私の特別会計には、まったく出番がない。
こうして3泊4日。
沖縄旅行特別会計。
予算執行率、堂々の0%。
そして旅行最終日。
那覇空港のロビーである。
いよいよ沖縄ともお別れ。
もうすぐ飛行機に乗るという、その時だった。
財務省から静かに声が掛かった。
「預けてたお金、返して。」
……。
はい。
3泊4日、一度も使うことなく、Gパンの前ポケットで私と一緒に沖縄を旅した特別会計。
那覇空港にて全額返納。
ここまでは私も確認している。
問題は、その後である。
返納された特別会計は一般会計へ戻されたのだろうか。
それとも別の特別会計へ振り替えられたのだろうか。
翌年度へ繰り越されたのだろうか。
私には分からない。
財務省から、その後の使途についての説明もない。
ひょっとすると――。
私の知らないどこかで、静かに、着実に、
金塊が膨らんでいるのではないだろうか……。
まあ、いい。
私は月々、片手ほどのお小遣いを頂いて満足している爺さんである。
国家財政の深いところまで首を突っ込むつもりはない。
何より、下手に財務省を追及して、
来年度予算を削減されては困る。
よって本件については、これ以上の追及を差し控えることとする。
ただし――。
あの沖縄旅行特別会計が、その後どこへ行ったのか。
その使途は現在も不明である。
そして今日もまた、私の知らないどこかで……。
金塊は静かに膨らみ続けている。
たぶん。
※なお、金塊を除き、ここまで語られた出来事はすべてノンフィクションである。
