ものづくり探訪 in 瀬谷
― 触って初めて見えた、設計の本質 ―
本日は「ものづくり探訪」と称して、瀬谷の工房へ足を運んできた。


これまで図面上で考えていたものを、実際に3Dプリンターで出力し、
素材の違いや構造による変化を、自分の手で確かめるためである。
現地には実機があり、その場で自分のデータを出力できる環境。
これはもう見学ではない。完全に“実践”である。
■ サポート材あり/なしの現実

今回、同一データで
「サポート材あり」と「なし」の2パターンを出力した。
結果は明確だった。
サポート材なしの場合、
垂直に積み上げた後、いきなり横に広がる形状の部分で
糸を引いたように崩れ、形にならない。
一方、サポート材ありでは、
形状そのものはしっかり再現された。
ただし当然ながら、
サポートを除去する工程が必要となり、
仕上げという点では若干見劣りする部分が出てくる。
うまくいかなかった。だが、理由ははっきりと見えた。
“形は出る。しかし仕上げが課題になる。”
この現実を、はっきりと体感した。
■ TPUという素材の個性
今回使用したTPUは、やはり柔らかい。
この“柔らかさ”がメリットでもあり、同時に難しさでもある。
ノズル移動時に糸を引きやすい
自重で垂れやすい
サポート材が外しにくい
さらに現地で言われたのは、
「TPUといっても素材の質で結果は変わる」ということ。
同じTPUでも、グレードによって全く別物になる可能性がある。
■ 素材を変えても、劇的には変わらないこともある
現地ではPET系の素材にも触れることができた。
しかし正直なところ、
「これは大きく変わる」というほどの差は感じなかった。
おそらくこれは形状にも依存する。
つまり、
素材を変えれば良くなる、という単純な話ではない。
■ 触って初めてわかる世界
今回最も大きな収穫はここにある。
同じ形状でも、
素材が違えば、手に取った瞬間の印象はまるで違う。
図面では同じでも、体験は同じではない。
設計とは形を決めることではなく、
“体験を決めること”なのだと実感した。
■ そして見えてきた分岐点
今回の検証で、はっきりとした分岐が見えた。
・形状をそのまま守るなら
→ サポート材が必要
→ 本チャンは金型が現実的
・形状を少し変えるなら
→ サポート材なしでも成立する可能性あり
→ 3Dプリントで完結できる道が見える
例えば、
いきなり横に広がるのではなく、
徐々に広がる形状にすることで、
サポートなしでも成立する可能性がある。
■ 今回の本質
今回の気づきを一言で言えばこれだ。
「作れない形」なのではない。
「作り方に合っていない形」だった。
■ この訪問が実現した理由
今回、この瀬谷の工房を訪れることができたのは、
実は社員の一言がきっかけだった。
私が「TPUで試してみたい」と話していたことを覚えていて、
わざわざ調べて、この場所を教えてくれたのだ。
こういうことが、さらっとできる。
特別なことのようでいて、実は日常の中にある気遣い。
気が利く、やさしい社員がいる。
そういう人たちに支えられている会社なのだと、改めて感じた。
ものづくりの探訪でありながら、
同時に“人のあたたかさ”にも触れた一日だった。
■ 次の一手
明日はこの気づきをもとに、
形状そのものに手を入れる。
3Dプリンターの弱点を理解した上で、
サポート材なしでも成立する構造へ。
これは単なる修正ではない。
“出来る形へ翻訳する”というチャレンジである。
■ 最後に
ものづくりにおいて大切なのは、
一つの正解に固執しないことだと思う。
金型で仕上げる道
3Dプリントで完結させる道
どちらも残しておく。
選択肢を持つことこそが、ものづくりの強さである。
そしてその選択肢は、
人によって広がっていくのだと思う。
最後に、これだけは伝えておきたい。
自分が得た気づきは、誰かの最初の一歩になる。
もし3Dプリンタで悩んでいるなら、
まずは“形状”を疑ってみてほしい。
